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静岡地方裁判所沼津支部 昭和60年(ワ)446号 判決

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、二六四〇万円及びこれに対する昭和六〇年一一月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告の本件土地所有

原告は、昭和四七年五月二七日、訴外岩崎勤(以下「岩崎」という。)から田方郡函南町平井字南谷下一七四〇番四一二(以下、地番区域を同じくする土地については地番のみで表示する。)の土地一〇八四平方メートル(以下「元一七四〇番四一二の土地」という。)を買い受け、その後同土地の一部九六平方メートルの所有権を他に移転したがその余の同土地(別紙物件目録記載の土地、以下「本件土地」という。)を所有している。そして、本件土地の位置、範囲を示すと、別紙図面Iに記載された赤斜線部分となる。

2  本件土地の侵害及び公図の変造

(一) 原告が元一七四〇番四一二の土地を取得した昭和四七年五月二七日当時、同土地を含む近隣一帯は田方郡函南町役場企画管財課保管にかかる副図(別紙図面A)のとおりの山林であり、当時原告が岩崎から取得した土地の範囲は別紙図面J記載のイロハニイの各点を順次直線で結んだ部分であった。

(二) その後、訴外株式会社大都リッチランド(以下「大都リッチランド」という。)の関連会社である訴外株式会社大都(以下「大都」という。)が伊豆エメラルドタウン、パサデナタウンなどの名称で右山林を対象に別荘分譲地として開発事業を行った。

(三) 当時、大都の社員であって土地家屋調査士の資格を有する訴外塚田雅良(以下「塚田」という。)は、同社の前記開発事業計画に基づき同社が取得した田方郡函南町平井字南谷下一帯の山林(以下「本件山林」という。)についての分筆、合筆の登記申請手続の任務を遂行することとなり、静岡地方法務局三島出張所(以下「三島出張所」という。)に対し、本件山林についての分筆、合筆申請手続を行い、昭和四七年一二月四日、本件山林東側の分合筆が別紙図面Bのとおり完了し、昭和四八年七月一五日には、本件山林西側の分合筆が別紙図面Cのとおり完了した。別紙図面B・Cの合成図は別紙図面Dである。

(四) ところで、土地の分合筆の申請手続がなされた場合、登記官は、登記簿に登記するとともに、登記簿に対応させて法務局備え付けの公図に分合筆の実線を入れて行く手統を行っていくものであるところ、本件山林付近の三島出張所備え付けの元の公図は縮尺三〇〇〇分の一であった。本件山林の分譲に伴う大都の土地の分合筆の手続は、広範囲でしかも多数回にわたるため縮尺三〇〇〇分の一の公図では、公図上に分合筆の実線を入れていくことはできないことなどから、縮尺三〇〇〇分の一の備え付けの公図を五〇〇分の一の公図に改製することになった。そして、三島出張所の登記官が作成すべき五〇〇分の一の公図は、前記分合筆手続からすれば、別紙図面Dでなければならないにもかかわらず、昭和四八年一〇月二二日に完成した公図(以下「本件公図」という。)は別紙図面E(複写機で縮小されたもの)のとおりになった。

(五) 本件公図は、本来あるべき公図(別紙図面D)と対比すると、次のような重大な相違がある。

(1) 位置が異なる土地

ア あるべき公図を見ると一七四〇番一七五九・同番一七六〇の土地は、同番一九九九の北側に位置しているが、本件公図では、これが同番一九九九の南側に位置し、かつ、同番一七五九・同番一七六〇の土地は隣り合っていたものを分離させられて本件土地の北側、同番一七九六の南北に配置させられている。

イ あるべき公図を見ると一七四〇番二〇一五・同番二〇一六の東側には、同番四一二の土地が位置しているが、本件公図では、同番二〇一五・同番二〇一六の東側は、同番一七八六・同番一七八七・同番一七八八が配置させられている。

ウ あるべき公図を見ると一七四○番一四九四・同番一四九三・同番一四九二の西側には、同番四一二の土地が位置しているが、本件公図では、同番一四九四・同番一四九三・同番一四九二の西側には同番一七五九・同番一七九六が配置されている。このイウの配置によりこの付近の土地の全体の位置が異なっている。

エ あるべき公図を見ると一七四〇番一七八九・同番一七九〇の土地は、同番一七六一・同番一七六二の土地の南側に位置しているが、本件公図では北側に配置され、位置が入れ替わっている。

オ あるべき公図を見ると一七四〇番一七九四の土地は、同番四〇二の土地の南側に位置しているが、本件公図では、同番二〇〇〇の土地の南側に配置されている。

(2) 形状が異なる土地

ア あるべき公図を見ると一七四〇番四一二の北側の同番一八六六・同番一七九六に面する形状は、直線になっていないが、本件公図では、直線になっていて、別紙図面Fの凸部分と別紙図面Eの凹部分と合致しない。

イ あるべき公図を見ると一七四〇番四一二・同番四一四と同番一四九四・同番一四九三・同番一四九二・同番一四九一・同番一四九〇との間には、道路と思われる土地が存在するにもかかわらず、同土地は密着した土地となっている。

(六) その結果、本件土地は、昭和五七年二月一〇日作成にかかる公図(別紙図面F)上には明確に存在するが、別紙図面DとEFを対比させると前記事実から本件土地上に同番一八六六・同番一七八七・同番一七五九・同番一七九六・同番三九四の土地が位置することになり、本件土地と重なりあい、本件土地は本件公図上には存在しない土地となる。

(七) 一方大都は、右登記申請手続と平行して、元一七四○番四一二の土地を原告から取得していないにもかかわらず、大都の別荘分譲地として販売する計画を立て、右土地上に道路(一七四〇番三九四)を造り、さらに右土地を六区画に区画割して造成工事を施工し、右土地を〈1〉一七四○番一七五九山林二七八平方メートル、〈2〉同番一七九六山林二四八平方メートル、〈3〉同番一七八七山林二三五平方メートル、〈4〉同番一八六六山林二三七平方メートル、〈5〉同番一七八八山林二三一平方メートルの一部、〈6〉同番一七九七山林二四五平方メートルの一部、〈7〉同番三九四道路に分け、〈1〉ないし〈6〉を第三者に別荘分譲地として売却し、右第三者らは、本件公図が各筆の土地の位置を明示するものと信じて大都から購入することにより、原告の本件土地に対する支配を侵害した。この結果、現実の土地利用状況は本件公図のとおりとなり、原告の本件土地に対する支配は排除されてしまった。

3  登記官の故意・過失

(一) 登記官と大都との共謀

(1) 大都としては、前記各地番として売り出す各土地の所在場所と現実に分譲した土地の公図上の所在位置とを合致させる必要が生じたため、大都の社員である塚田は、当時、三島出張所において分合筆登記手続を担当していた土屋辰巳登記官(以下「土屋登記官」という。)を抱き込むことを計画し、土屋登記官に大都の現実の別荘分譲販売の区画割に合致する公図の作成を依頼し、協力を求めた。そしてこれを承諾した土屋登記官は、昭和四八年一〇月二二日、右承諾内容に従い本件公図を作成し、三島出張所に備え付けた。

(2) 右のとおり、土屋登記官は、原告の本件土地に対する支配を侵害することを大都と共謀し、昭和四八年一月末から同年一○月二二日までの間、大都が原告の本件土地に対する支配を排除し別の地番の別荘地として分譲販売してしまうこと及び大都が現実に消費者に対し販売する分譲別荘の土地区画割は、大都が昭和四七年一二月から同四八年七月中旬までに三島出張所に提出した本件山林の分合筆手続に基づく土地区画割とまったく異なることを知悉しつつ、大都が販売する分譲別荘の土地区画割に合致する公図を敢えて改製し、大都が改製公図に基づく土地支配を確立してしまうことに加担したものであり、その結果原告に後記損害が生じたものである。

(二) 登記官の過失

(1) 公図は、国家が関与して作成し、かつ、不動産に関する権利関係を公示する登記所において、閲覧の用に供されていることから、各筆の土地の位置、形状、境界線、面積等の概略を明らかにするための公的な資料として現実の不動産取引においても、また、分筆などの手続においても広く利用されているものであり、不動産登記法一七条所定の地図(以下「一七条地図」という。)が整備されるまでの間は一七条地図に代わる重要な機能を営んでいるものである。

(2) 右のような公図の機能からして、公図を作成または改製し、かつ、閲覧に供するため、公図を備え付ける職務を行う登記官は、当該地図が各筆の土地の位置、形状、境界線などを明らかにするための公図として使用できるかどうかについて実質的な調査義務がある。そして本件のような公図の改製の場合においては、昭和二九年六月三〇日民事甲第一三二一号民事局長通達第一八条には「あらたに作成した地図を土地台帳法施行細則第二条の地図とするには、当該地図に記載された各筆の土地の状況が土地台帳の記載事項に符合するかどうか、その他その地図が土地台帳法施行細則第二条の地図として相当であるかどうかを調査する。」とあり、また、昭和四七年八月三○日民事三発第七六八号民事局第三課長依命通知には「再製にあたっては、原図について、土地の筆界あるいは地番等の変更にもとづく修正がなされているかどうかを、地積測量図等の資料により調査し、修正未済のものについては所要の修正を加えること」とあることから、登記官としてはこれらの通達を忠実に遵守すべき義務がある。

(3) 昭和四八年一○月二二日、本件公図を作成し改製した公図として備え付けて閲覧に供した担当登記官は、前項の調査義務を怠り、昭和四八年一○月二二日以前に本件土地を含む地域の公図として右出張所に備え付けられていた公図と符合せず、改製図と改製前の公図との相違は前記2(五)に記載したように重大であり、また、本件土地の位置を表す別の公図と改製図とが本件土地について重なりあい二重の公図となってしまうのに、漫然と正しい公図として改製し、かつ、備え付けたのであり、その結果原告に後記損害が生じたものである。

4  損害

(一) 主位的主張 二六四○万円

(1) 本件土地の時価相当額

被告による公図の変造は、約一〇〇筆に及ぶものであって範囲は膨大である。そして変造された公図に基づき別荘地の分譲が多数の購入者に対し実際に行われ、この購入に際し購入者が銀行から借り受けた金員につき設定された抵当権も相当数あり、利害関係人は一〇〇人を下らないものである。さらに、購入者より同土地上に建物が建築されるなどして支配が確立され、その期間は十年余に及んでいる。しかも、これら土地購入者は公図に基づき説明を受け善意で支配を開始している。右の事情に照らせば、原告が自己の本件所有地につき占有侵奪をしている土地購入者に対し、境界確定訴訟及び建物収去土地明渡訴訟を提起し、これの回復を求めることは不可能である。すなわち、原告が本件土地侵奪者に対し、境界確定訴訟及び建物収去土地明渡訴訟を提起し、その訴訟により権利の実現が図れても、本件土地の侵奪者が更に別の侵奪者に対し同様な訴訟を提起し、結局違法に支配されている約一〇〇筆分譲土地所有者間で順次境界確定訴訟及び建物収去土地明渡訴訟を惹起させるという事態になり、分譲地全体につき収拾がつかない混乱をもたらすことになる。このように原告が本来あるべき公図を基に本件土地自体の原状回復を求めることは、法形式的には可能であっても、それは法形式にすぎず、社会通念上不能というべきで、原告の建物収去土地明渡請求権は行使しえない。以上のことから、原告は、国の違法行為により本件土地自体を喪失したということができる。そして、本件土地取り戻しに代わる土地の時価相当額は二四〇〇万円と判断されるから、原告は同額の損害を受けた。

(2) 弁護士費用

本件訴訟の提起追行に要する弁護士費用としては二四〇万円が相当である。

(二) 予備的主張 六〇七万六六〇二円

(1) 賃料相当損害金

原告は本件土地の占有を昭和四八年七月一五日ころ奪われ、現在も使用できない。使用できない損害は賃料相当額というべきであり、一ヵ年の賃料相当額は一坪一〇〇〇円で、本件土地の広さは二九八・五七坪である。そこで、昭和四八年八月一日から訴訟提起の前月である昭和六〇年一○月末日までの賃料相当損害金は三六五万七四八二円となる。

(2) 建物収去土地明渡訴訟に要する費用

本件土地の支配を回復するためには建物収去土地明渡訴訟が必要となると考えられるところ、右に要する費用は本件の損害となる。その内訳は、貼用印紙代五〇〇円、違法占有者九名分の郵券一万八六二〇円、弁護士費用二四○万円である。

5  よって、原告は被告に対し、国家賠償法一条に基づく損害賠償として二六四○万円及びこれに対する昭和六〇年一一月二一日より支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は不知。

原告は別紙図面[1]に記載された赤斜線部分が本件土地である旨主張するが、右図面[1]には本件土地の位置、範囲を特定するための基点、方位角も明示されていないうえ、測点間の距離関係は何ら示されておらず、右図面[1]の表示をもっては未だ本件土地の範囲が特定されているとはいえない。

2(一)  同2(一)、(二)の事実は不知。

(二)  同2(三)の事実のうち、別紙図面B及びCが三島出張所に備え付けられていることは認め、その余の事実は不知。

(三)  同2(四)の事実のうち、昭和四八年一○月二二日に本件公図が作成されたことは認めるが、その余は争う。

(四)  同2(五)、(六)は争い、(七)の事実は不知。

3(一)  同3(一)の事実のうち、昭和四八年一○月二二日に本件公図が作成され、三島出張所に備え付けられたことは認めるが、その余の事実は否認する。

土屋登記官は分筆登記手続を担当した登記官の一人にすぎない。

(二)  同3(二)の事実のうち登記官に過失があるとの点は否認し、その余は争う。

4(一)  同4(一)(1)の事実のうち公図が変造されたとの点は否認し、その余の事実は不知、同(2)は争う。

(二)  同4(二)の事実のうち、原告が本件土地の占有を奪われ、現在も使用できないとの点は不知、その余は争う。

三  被告の主張

1  因果関係の不存在

(一) 公図の作成経緯、精度、証明力について

公図とは、旧土地台帳法施行細則(昭和二五年七月三一日法務府令八八号)二条の規定により、土地台帳の外に、土地の区画及び地番を明らかにするため登記所に備え付けられていた旧土地台帳附属地図である。昭和三五年法律一四号不動産登記法の一部を改正する等の法律により、旧土地台帳法(昭和二二年法律三〇号)が廃止され、公図はその法的根拠を失ったが、一七条地図が整備されるまでの暫定的措置として登記所において内部的参考資料として保管され、また、行政サービスとして一般の閲覧及び謄写に供されているものである。

ところで、公図の沿革をみると、明治初年に行われた地租改正の際、全国的な土地調査が実施され、地番、地籍が設けられ、所有区分がなされて地租に関する諸帳簿が作成されたのであるが、これとともに明治八年から同一四年ころまでに地租改正図(略称「改租図」)が作成され、これが公図の基礎となったものであり、更に明治一八年から同二二年ころまでに実施された地押調査に基づく「地図の更正」により作成された地押調査図が昭和二五年七月に登記所に引き継がれて「公図」と称されるようになったのである。

このように、公図は、そもそも明治初期から中期にかけて地租徴収の基礎資料とする目的をもって作成されたものであり、当時は測量技術も発達していなかったことから、その精度においては必ずしも十分といえないものがある。そして、特に山林原野に関するものについてはその精度が極めて低いといわれている。

また、公図は、不動産登記簿のように土地に関する権利関係を登録・公示して不動産取引の安全を図るという登記制度上の観点から作成されたものではなく、したがって現地復元性はなく、しかも作成日的が租税徴収にあったため、その後の土地の異動(分合筆)にともなう修正も必ずしも完全にはなされていないのである。

そこで、前記昭和三五年法律一四号による改正法は、その一七条において、「登記所ニ地図及ビ建物所在図ヲ備フ」と規定した。この一七条にいう地図がいわゆる「一七条地図」であるが、「地図ハ一筆又ハ数筆ノ土地毎ニ之ヲ作製スルモノトシ各筆ノ土地ノ区画及ビ地番ヲ明確ニスルモノナルコトヲ要ス」と定めた同法一八条の規定の趣旨に照らすと、一七条地図は、現地復元性を有する地図のことであり、例えば、土地改良による確定図、区画整理による換地図、国土調査による地籍図等その位置と区画を正確に現地において指示することができるものを指すものである。したがって、現地復元性をもたない公図と一七条地図とではその精度及び証明力において重大な相違がある。

(二) 公図の改製について

本件土地付近の土地の地目の多くは山林、原野であり、分譲業者が大規模分譲を行うため、昭和四六年ころから数次にわたり分合筆が集団的に行われた。

ところで、宅地分譲等で土地を合併し更に細分割する場合に、わずかの筆数ずつ段階的に分割し、その都度公図上に分割線を記入していくと、最終段階で筆界線の位置が狂うことは考えられることである。これは、当該公図の精度と分筆測量の精度の不一致及び分割線記入の際の誤差の累積が大きな原因であるから、この点を解決するには、細分割する場合に全筆同時に分割し、これを当該公図の精度に合わせた地形図的なものを用いて案分記入するか、もしくは、分割後、細分割部分について一括して地図訂正の処理として、地積測量図に基づいて作成した新公図へ切替え(改製)するかのいずれかの方法しかない。

本件土地付近の改製前の公図の縮尺は三〇〇〇分の一であり極めて精度の低いものであったうえ、分合筆が繰り返し行われ土地が細分化されたため、三〇〇〇分の一の公図上に各土地を表示することが物理的に困難となった。

そこで、この公図をより高精度のものにするとともに、今後の分筆線の記入処理を可能にするため、昭和四八年一〇月二二日、縮尺五〇〇分の一の地積測量図に基づいて作成された現状の図面を当該地域の公図(縮小図である別紙図面Eの元図)に改製したものであって、このような取扱いは、大規模分譲等の場合一般に行われている取扱いである。

なお、本件土地は、右分譲地には含まれていない。このことは右分譲地についての改製後の公図から本件土地が除外されていること(別紙図面E及びF参照)から明らかである。

(三) 因果関係の不存在

(1) 公図の記載に変更があった場合でも、そのことにより実体法上の所有権や占有権に変動が生じるものではないから、公図の改製と原告の損害との間に因果関係は存しない。

(2) 公図は各土地の位置関係を示すものであるところ、原告が所有していると主張する一七四〇番四一二の土地は公図上存在し、何ら変動はない。原告が主張する改製に伴う不備の指摘はその上部に関する改製部分の問題であって、同番四一二の土地には何ら影響はない。

(3) 公図の改製と大都リッチランド、大都(以下「大都ら」という。)による侵害行為との間に因果関係はない。すなわち、公図が改製されたのは昭和四八年一〇月二二日であるが、大都らが本件土地にブルドーザーを入れて侵害したのは昭和四七年一〇月以前であって、公図改製の約一年前である。しかも、原告が侵害していると主張する各土地の取得状況をみると、一七四〇番三九四の土地の取得者は原告主張の侵害者そのものであって、改製前の取得者であることは明らかであるし、同番一七八八、一七八七、一七九七、一七九六の各取得者はいずれも公図改製前に取得しており、そうするとこれら土地の売買は公図を基礎に売買されたのではなく、現地の分譲区画に基づいて売買したものと推認される。また、同番一八六六、一七五九については、現登記名義人はいずれも公図改製後に取得したものであるが、いずれも公図改製前に一度売買された経緯があることからすると、右と同様現地の区画割に基づいて売買したものと考えられる。そうすると、右各土地所有者の各土地の取得は、昭和四八年一〇月二二日の改製後の公図とはまったく関係なく行われたものとみるべきであって、この点からも公図の改製と大都らの本件土地への侵害との間には何ら因果関係はないというべきである。

2  登記官の過失の不存在

(一) 公図については旧土地台帳法あるいは同法施行細則等に改製に関する規定は存せず、またその際実質的な調査義務を定めた規定も存しない。原告が主張する昭和二九年六月三〇日付民事局長通達一八条も公図のない土地について新たに地図を作製した場合に関するものであって改製の場合を定めていないことは明らかである。そうであれば、もともと公図の法的根拠とされていた旧土地台帳法は改製にあたっての調査義務等が規定されていなかったのであるから、登記官が法的に調査義務を負ういわれはない。まして、公図がその法的根拠を失い、内部的参考資料となっているにすぎない現在においては登記官に調査義務は存しない。そして原告主張の昭和四七年八月三〇日付依命通知も内部文書たる通知であってこれを基礎に登記官の調査義務を根拠付けることはできない。

(二) 原告は公図が一七条地図に代わって重要な機能を果たしていることを根拠に登記官の調査義務を主張するが、前記1(一)のとおり、公図は一七条地図と異なりその精度は極めて低く現地復元性はないのであるから、公図と一七条地図を同列において調査義務を論じることは許されない。

(三) 公図の目的は、土地の区画及び地番を明らかにしてその位置関係を把握するものであるから、仮に公図の改製にあたって登記官に調査義務があるとしても、登記官としては、改製前後で公図上の位置関係が一致していることを調査すればたりるというべきである。これを本件についてみると、本件では一七四○番四一二の土地の公図と改製された部分の公図とが調査すべき対象となるところ、本件における公図から明らかなとおり、一七四○番四一二の土地の公図の上部に改製された部分の公図が位置し、改製前の位置関係と一致するのである。してみれば、被告は本件の公図の改製にあたって調査義務を尽くしたものというべく、被告に改製にあたって調査義務の懈怠はない。

3  損害の不発生

(一) 所有権の侵害について

原告が本件土地を所有しているとしても、本件土地の所有権が喪失しあるいは所有権の行使が困難であると認むべき事情はまったく存しない。本件土地については、その範囲自体不明確であってそもそも本件土地がどの程度侵害されたかさえも不明であるが、仮に原告の主張を前提としても、数筆の土地所有者を相手方として法的手段を採れば足り、そのこと自体容易にできることであって何ら回復困難なことではない。また原告は、本件土地の占有者はいずれも善意で一〇年余占有していることから回復困難と述べているところ、右主張が仮に占有者による取得時効が完成しているという趣旨であるとしても、時効は援用をまってその効果が生ずるものであるところこれら占有者が時効を援用したという事実は存せず、しかも、右占有者の中には原告が現実の侵奪を行った者としている大都リッチランドも含まれている上、これら占有者が善意であることについて過失がないことなどの立証は全くない本件においては、取得時効の効果を原告が主張することは理由がない。したがって、原告の所有権侵害の主張は理由がない。

(二) 占有権の侵害などについて

次に原告は、本件土地に対する占有を侵害された旨主張するところ、前記のとおり、その占有の範囲自体不明確であるが、仮に原告主張のとおり占有関係に変動があったとしても以下に述べる事情からすると、原告がその後に追認していたともいえる。すなわち、岩崎は本件土地を管理していたが、昭和四七年一〇月以前に大都あるいは大都リッチランドが本件土地内にブルドーザーを入れて道路を作ったので、同人が大都あるいは大都リッチランドに抗議をし、その際には道路が出来たことによりかえって本件土地の価値が上ったと考えていた。その後同人は大都あるいは大都リッチランドと交渉し、結局原告は、本件土地の一部及び一七四〇番四〇八の土地を大都あるいは大都リッチランドの他の土地と交換し、その後本件土地周辺に分譲地化が進み、原告主張の本件土地が分譲地として形成されたことについてさしたる抗議もしていない。更に原告主張の本件土地が分譲された後になってその取得者に一応の抗議は述べたものの現在まで何らの手段を講じず、特に当初から侵害した当事者であり、かつ現在の侵害者である大都あるいは大都リッチランドに対しても何らの措置も講じず、講じようともしていない。これらの事情を前提として考慮すると、原告としては、原告のいう本件土地が侵害された後、大都あるいは大都リッチランドとの交渉において、同土地を分譲化をし、あるいはこれを分譲することに同意していたものということができ、原告は大都あるいは大都リッチランドによる侵害を追認していたものとも認められるのである。

してみれば、原告の本件土地に対する占有の変動は原告の意思に基づくものであり、到底侵害とはいえない。

第三  証拠〈省略〉

理由

一  〈証拠〉によれば、原告は、昭和四七年五月二七日、岩崎から元一七四〇番四一二の土地を買い受け、その後同土地の一部九六平方メートルを分譲して同年一○月二五日交換により大都に所有権を移転したが、その余の土地である本件土地を所有している事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

二  〈証拠〉によれば、以下の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

1  原告が本件土地の所有権を取得した昭和四七年五月二七日当時、田方郡函南町役場企画管財課には、本件土地を含む近隣一帯の地域につき、副図(〈証拠〉、本件土地付近の部分が別紙図面A)が保管されていた。

2  大都は、その頃、伊豆エメラルドタウン、パサデナタウンなどの名称で、別荘分譲地としての開発事業を計画し、そのために取得した本件山林について、分合筆の登記申請手続を行うこととなり、右手続を大都の社員であり土地家屋調査士の資格を持つ塚田が担当することとなった。

3  塚田は、右分合筆の登記申請のため本件山林について順次土地所在図、地積測量図などの作成に着手し、昭和四七年一二月四日には、本件山林東側の分合筆につき別紙図面B(〈証拠〉)のとおりの土地所在図が作成され、昭和四八年七月一五日には本件山林西側の分合筆につき別紙図面C(〈証拠〉)の土地所在図が作成された。そして塚田は、大都の代理人として、右各土地所在図を登記申請書類の一部として三島出張所に分合筆の登記申請手続をした。右別紙図面B及びCを合成すると別紙図面Dとなる。

4  三島出張所の登記官は、右3の分合筆の登記申請をうけて、法定の登記の実行をするとともに、当時同出張所に備え付けられていた公図に、右登記に照応する分割線の記入等の修正作業を行って旧公図(〈証拠〉)を作成した。

5  ところが旧公図の縮尺が三〇〇〇分の一であるため、前記分割線の記入等により判読が困難となる部分が生じることなどから、公図が改製されることとなり、本件山林部分について、昭和四八年一○月二二日、縮尺五〇〇分の一の本件公図(本件土地付近が甲第四〇号証)が作成され、三島出張所に備え付けられ(右事実は当事者間に争いがない。)、本件山林部分以外の本件土地を含む本件山林周辺部分については、昭和五七年二月一〇日に別紙図面F(〈証拠〉)のとおりの公図が作成され、同出張所に備え付けられた。

6  別紙図面DとEとを比較すると、図面上の各土地の位置、形状について請求原因2(五)記載のとおりの差異が存する。

7  大都は、本件山林を分合筆し区画割するのに伴い分譲を開始し、本件土地周辺の土地では、一七四〇番一七八八の土地につき昭和四八年一月二六日付売買を原因として大都から訴外高松千秋に所有権移転登記がなされ、同番一七八七の土地につき同四八年一月二六日付売買を原因として大都から訴外石川文雄に所有権移転登記がなされ、同番一八六六の土地につき同四八年五月一〇日付売買を原因として大都リッチランドから訴外高山金属商事株式会社に所有権移転登記がなされたが、その後同登記は錯誤により抹消され、同五二年一二月二一日付売買を原因として訴外高橋周二に所有権移転登記がなされ、同番一七九七の土地につき同四八年一月二六日付売買を原因として大都から訴外水越咲七に所有権移転登記がなされ、同番一七九六の土地につき同四八年一月二六日付売買を原因として大都から訴外大迫敏郎外一名に所有権移転登記がなされ、同番一七五九の土地につき同四七年一二月二三日付売買を原因として大都から一旦訴外株式会社金正堂に所有権移転登記がなされたが、その後同登記は錯誤により抹消され、同四九年三月八日付売買を原因として大都から訴外清水一雄に所有権移転登記がなされているもので、同番三九四の土地については道路部分として大都(昭和四八年三月一五日以降は大都リッチランド)に所有権登記が残された。

三  原告は本件土地の範囲が別紙図面[1]に記載した赤斜線部分であって、本件土地の支配を現在一七四〇番一七九六、同番一七五九、同番一八六六、同番三九四の土地所有者らに侵害されている旨主張し、一方被告は未だ本件土地の範囲は特定されていない旨主張するので、まず本件土地の範囲及びこれに対する侵害の有無について検討する。

1  〈証拠〉によれば、現在三島出張所に備え付けられている公図である本件公図と別紙図面Fを比較すると本件公図の一七四〇番二〇一七、同番二〇一六、同番一八六六、同番三九四、同番一七五九、同番一四九二、同番一四九一、同番一四九〇に囲まれた平行四辺形様の空白部分と別紙図面Fの同番四一四及び本件土地が記載されている部分とが対応し接合すべきものと考えられること、本件公図は、塚田が登記申請の際添付した土地所在図、地積測量図などを基に作成されたと考えられるから、その土地の面積などには一応の信頼がおけると考えられること、本件公図の図上測定により得られる距離に基づいて算定すると右平行四辺形様の空白部分の広さは千二百数十平方メートル前後と推計されること、登記簿上本件土地の地積は九八七平方メートルであり、また本件土地のほぼ南に位置する訴外三田廣男所有の一七四〇番四一四の土地の登記簿上の地積は一一一○平方メートルであること、原告が本件土地であると主張する別紙図面[1]に記載された赤斜線部分に含まれている一七四〇番一七九六、同番一七五九の登記簿上の地積はそれぞれ二四八・七五平方メートル、二八七平方メートルで、右赤斜線部分にほぼ二分の一強が含まれている同番一八六六の土地の登記簿上の地積は二三七平方メートルであること、本件土地の前所有者である岩崎は、本件土地を購入する際、実測はしなかったが現地を検分したところ、本件土地は、その南側(同番四一四)、西側の各土地とは林相が明確に異なり、本件土地の南側、東側、北側の各境界上に樺の木が植栽されており、境界は明確でほぼ登記簿上の地積に見合う面積があると判断できたし、現在、現地における本件土地の場所は、本件公図を現地にあてはめたときの一七四〇番一七九六、同番一七五九、同番一八六六の一部及び同番三九四の一部に対応する土地と考えている旨証言していること、一七四〇番一七九六、同番一七五九、同番一八六六は別荘地として分譲を受けた第三者に占有され、同番三九四はその道路として使用されていることがそれぞれ認められ、右認定を左右するにたりる証拠はない。

2  右認定にかかる事実によれば、前記本件公図の平行四辺形様の空白部分についての計算上の面積と訴外三田廣男所有の一七四〇番四一四の土地の登記簿上の地積がほぼ見合うこと、原告が本件土地と主張する別紙図面[1]に記載された赤斜線部分の面積についてみると、一七四〇番一七九六、同番一七五九の登記簿上の地積の合計が五三五・七五平方メートルとなり、これに同番一八六六の土地の一部、同番三九四の一部の地積を加えると、ほぼ本件土地の登記簿上の地積九八七平方メートルに見合うことが認められ、そしてこれらの事情に前記のような本件土地と一七四〇番四一四の公図上認められる位置関係及び〈証拠〉を総合すると、本件土地の範囲は、本件公図上において示すとすれば、ほぼ別紙図面[1]に記載された赤斜線部分であると認められる。被告は右別紙図面[1]には本件土地の位置、範囲を特定するための基点、方位角、測点間の距離関係が明示されておらず、原告主張の境界も大都が入れた境界標であるから、未だ原告主張の本件土地の範囲は特定されていない旨主張する。確かに、原告主張の本件土地の範囲は本訴においては本件公図上において示されたものであり、証人岩崎勤の証言によれば境界標も大都が入れたものを指し示していると認められるから、本件土地の範囲が明確に特定されたとはいい難い点はあるにしても、前記認定事実からすれば、本件土地の相当部分が大都により区画割され分譲地として第三者に販売され、その一部(一七四〇番三九四)はその道路となっており、原告の本件土地に対する支配が侵害されている事実はこれを推認することができ、右推認を左右するにたりる証拠はない。

四  そこで、原告の本件土地に対する支配が侵害されていることと被告における本件公図の備え付けとの間に因果関係があるか否かについて検討する。

1  公図の作成経緯、精度、証明力及び公図の改製について〈証拠〉によれば以下の事実が認められる。

(一)  公図とは、旧土地台帳法施行細則(昭和二五年七月三一日法務府令八八号)二条の規定により土地台帳の外に土地の区画及び地番を明らかにするため登記所に備え付けられていた旧土地台帳附属地図のことをいう。昭和三五年法律第一四号不動産登記法の一部を改正する等の法律により旧土地台帳法(昭和二二年法律三〇号)が廃止され、公図はその法的根拠を失ったが、一七条地図が整備されるまでの暫定的措置として登記所において保管され、また、一般の閲覧及び謄写に供されている。そして公図はそもそも明治初期から中期にかけて地租徴収の基礎資料とする目的をもって作成されたもので、当時は測量技術も発達していなかったこと等から、その精度においては必ずしも十分といえないものがある。また公図は、不動産登記簿のように土地に関する権利関係を登録公示して不動産取引の安全を図るという登記制度上の観点から作成されたものではなく、したがって現地復元性はなく、しかも作成目的が租税徴収にあったため、その後の土地の異動(分合筆)に伴う修正も必ずしも完全にはなされていない。しかし一方、公図は、不動産に関する権利関係を公示する登記所において一般に閲覧の用に供されていることから、未だ一七条地図が全部の土地について整備されるに至っていない現在、その精度において不十分な点はあるにせよ、土地の位置、形状、境界線、面積などの概略を明らかにするための公的な資料として現実の不動産取引においても広く利用され、重要な機能を営んでいる。

(二)  一般に、宅地分譲等で土地を合併し更に細分割する場合には、わずかの筆数ずつに分割し、その都度公図上に分割線を記入していくと最終段階で筆界線の位置が狂うことが考えられるため、細分割する場合に全筆同時に分割し、これを公図の精度に合わせた地形図的なものを用いて案分記入するか、もしくは、分割後、細分割部分について一括して地図訂正の処理として、地積測量図に基づいて作成した新公図へ改製するかのいずれかの方法がとられている。

(三)  本件土地付近の改製前の公図の縮尺は三〇〇〇分の一であり極めて精度の低いものであったうえ、分合筆が繰り返し行われ土地が細分化されたため、三〇〇〇分の一の公図上に各土地を表示することが物理的に困難となった。そこで、この公図をより高精度にするために、昭和四八年一○月二二日、縮尺五〇〇分の一の地積測量図に基づいて作成された現状の図面を当該地域の公図(本件公図)に改製した。なお、本件土地は、この改製に際しての対象土地に含まれていない。

2  因果関係について

(一)  公図の性質は前記1(一)認定のとおりであるところ、右事実からすれば、公図は土地の所有権の範囲を確定するに際して利用される一つの資料にすぎず、その記載によって直ちに所有権の範囲が確定されるといった性質のものではないから、仮に本件公図の改製により、本件公図と〈証拠〉の公図(別紙図面F)の縮尺を同一にして重ね合わせた場合に公図上本来あるべき原告の土地上に他人の土地が記載されていることになるとしても、そのことのみによって直ちに原告の本件土地の所有権あるいは占有権が侵害されたことにならないのは明らかである。

(二)  前記二7認定の事実及び証人岩崎勤の証言によれば、原告が岩崎から本件土地を購入した後も、本件土地の管理は岩崎が行っていたこと、岩崎は、昭和四七年から同四八年一月ころにかけて大都がブルドーザーを用いて別荘地の道路等の造成を行った際、岩崎所有の一七四〇番四〇三等の土地が侵害されたとして大都に抗議したが、本件土地の侵害については大都に抗議をすることもなく、原告にも報告せずにそのままにしていたこと、同四八年一月ころには、大都の区画割は終了したこと、そして、一七四〇番一七八八、同番一七八七、同番一八六六、同番一七九七、同番一七九六、同番一七五九の各土地は、同四七年一二月から四八年五月にかけて大都から第三者に売り渡されていることが認められるところ、前記二5認定のとおり、本件公図が改製されたのは昭和四八年一○月二二日であるから、仮に原告の本件土地に対する支配が侵害された事実があるとしても、日時の先後関係からするとそれは本件公図改製前のこととなり、本件公図の改製との間に相当因果関係を認めることは困難である。原告は、被告が本件公図を改製することにより大都が本件土地に対する支配を確立するのに加担した旨主張するが、まず、土屋登記官が右の点につき大都と共謀したと認めるべき証拠はない。そしてまた、結果的に大都の侵害行為の結果にほぼ沿う公図に改製されることとなったとしても、前記四1(一)認定にかかる公図の性質などにかんがみると、公図は土地の所有権の範囲を確定する際の一資料となるにすぎないのであって、公図の改製により大都の所有権が確定するわけでもないから、本件公図の改製が原告において本件土地に対する自らの支配を回復することを不可能とするわけでもない。したがって、現在原告の本件土地に対する支配が侵害されているとしても、そのことと本件公図の改製、備え付けとの間に相当因果関係を認めることは困難といわざるを得ず、原告の前記主張は採用の限りでない。

五  以上のとおり、本件公図の改製と原告の本件土地に対する支配が侵害されたこととの間に相当因果関係を認めることができない以上、その余の点を判断するまでもなく、原告の本訴請求は失当である。

六  よって本訴請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 秋元隆男 裁判官 仲戸川隆人 裁判官 古久保正人)

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